夫にできること(3)

夫にできること(3)

乳がんは手術が終わってからがスタート

がんでは、最終的な診断後、もしくは手術後、再発・転移なく5年が経過すると、生存率が平坦化するため、5年間無事に過ごすことがひとつの治療目標といわれています。しかし、乳がんの場合は、性質が比較的優しく進行が緩やかであるという特徴から、5年過ぎても再発するケースがあるために、10年間無事に過ごすことが目標とされています。そのため、「手術でがんを取り除いたのだから治った」と考えがちですが、手術をしてからが、長い闘病生活になるといっても過言ではありません。特に、まだ目に見えないがん細胞が全身に存在する可能性のある方は、再発・転移予防のために、化学療法・ホルモン療法・放射線療法といった術後補助療法を行うことになります。個人差はありますが、これらの治療には副作用があり、長期間続けることが難しい方もいらっしゃいますが、治療を続けることで再発・転移する確率は飛躍的に低下しますので、できるだけ続けることが望まれます。励ますつもりだとしても、「手術が終わって成功したのだから、いつまでも病人でいるな」なんて言葉はかけないでくださいね。夫婦で長期戦の心構えで、がんと向き合ってください。

妻の不安を受け止める

乳がんを早期に発見して、手術できれいに切除したとしても、身体のどこかにがん細胞が潜んでいた場合、手術した側の乳房に再発、あるいは反対側の乳房や乳房以外の部位(リンパ節・臓器・骨など)に転移が生じる場合があります。そうなると治癒を目的とするのではなく、「がんと共に生きていく」ことを目的に治療を行っていくことになります。再発・転移してしまうことは、はじめてがんがわかった時以上にショックが強く、現実を受け止めるまでに時間がかかります。絶望的になって自暴自棄になったり、周囲に怒りを向けたり、周囲と距離を取ろうとしたりすることもあるでしょう。家族としても、「つらくて見ていられない」「どのように接して良いのかわからない」と、ただ困惑することもあるでしょう。このような気持ちをすぐに楽にすることは難しいですが、奥さまが自分の気持ちを話したいと思われる時には、ゆっくりと話を聞いてあげることが一番です。一見、出口の見えない話に思えることでも、家族に話を聞いてもらううちに、気持ちが少しずつ整理されて、「自分がどうしたいのか」「どうありたいのか」が見えてくることがあります。決して、話を逸らさず、否定的批判的にならずに、助言的にならずに、ただ、「気持ち」に耳を傾けてください。奥さまは、アドバイスや解決策を求めているのではなく、話を真剣にまっすぐ聞いてもらうことによって、大切にされているという安心感を得て、自分なりに答えを見つけていけるのです。奥さまの気持ちを受け止め、おふたりらしく、前に進んでいってください。